
漢方には、自然からの恵みを活用した叡智が詰まっています。昔から人々は、植物、動物、鉱物を使って体調を整えてきました。現代の医学にはない、独自の切り口で病気にアプローチする漢方は、多くの人々に支持され、愛されています。
漢方薬には、単一の成分ではなく、数多くの成分が含まれています。これらの成分が絶妙なバランスで配合され、病気によって異なる症状に対して対応することができます。また、一般的な西洋医学に比べて副作用が少なく、自然治癒力を高めることで予防にも役立ちます。また、漢方薬を現代医学と併用することで、より効果的な治療が期待できます。
本ブログでは、漢方の由来や歴史を紹介します。自分自身の体調管理に興味がある方や、病気を根本から治療したいと考えている方はぜひご確認ください。
目次
そもそも漢方とは?

①漢方について
漢方(かんぽう)は、中国の伝統医学に基づく自然療法の一種で、薬草、植物、鉱物などの天然成分を用いた治療法です。漢方は、紀元前2000年頃から中国で使われ始め、現在でも中国やアジア地域で一般的に用いられています。
漢方薬は、植物や動物由来の原材料を、煎じて湯薬、丸剤、顆粒、錠剤、カプセル剤、パッチなどの形で製剤されます。漢方薬は、体質改善、免疫力向上、疾患の予防や治療などに効果があり、西洋医学と併用することで相乗効果を生むこともあります。また、病状に応じた様々な処方があり、患者の個別の体質に合わせて処方することも可能です。
漢方薬の効果は、漢方医師によって診断された病気によって異なりますが、免疫力の向上、疲労回復、消化器の調整、生理痛の緩和、アトピー性皮膚炎の改善などに効果があるとされています。
一般的には健康な人々が健康維持や予防の目的で使用することもありますが、主に以下のような症状や疾患の治療に用いられます。
慢性疾患:肝臓病、腎臓病、糖尿病、高血圧、喘息、膠原病、リウマチなど。 アレルギー疾患:花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど。
婦人科疾患:生理不順、生理痛、更年期障害、不妊症、子宮筋腫、乳癌など。
消化器疾患:胃腸炎、胃潰瘍、胃酸過多、下痢、便秘、潰瘍性大腸炎、クローン病など。
神経疾患:不眠症、うつ病、不安障害、頭痛、めまい、認知症など。 外傷・スポーツ障害:捻挫、打撲、肉離れ、腰痛、関節痛、筋肉痛など。
ただし、漢方薬は、西洋医学とは異なる考え方や効果・副作用があるため、必ず医師や薬剤師の指導の下、正しい用法・用量を守って使用することが大切です。
②漢方の歴史
漢方の歴史は非常に古く、紀元前の中国の時代から始まります。
中国においては、皇帝の治療にも漢方薬が用いられたとされており、漢方薬は高い評価を受けていました。 紀元前には、神農氏という伝説上の医師が、百余種類の薬草を採取して薬効を研究したとされています。
また、戦国時代には、華佗や扁鵲などの著名な医師が活躍し、漢方薬の基礎を築きました。 中国の医学は、漢の時代にはすでに整備されていましたが、唐の時代に入ると、より発展し、膨大な医学書が編纂され、多くの医師たちが活躍しました。宋の時代には、宋慶遠という著名な医師が、医学書『傷寒論』を編纂し、漢方薬の基礎を築きました。
漢方薬の歴史は、中国以外でも広く知られています。日本では、710年に唐からの使節が持ち帰った医書『伝暦』を基に、漢方薬が発展していきました。また、朝鮮半島でも、中国の漢方薬が導入され、朝鮮の伝統医学である韓方が発展していきました。
現代では、漢方薬は中国をはじめ、日本、韓国、台湾、シンガポールなどで広く用いられています。また、欧米でも漢方薬の人気が高まっており、様々な研究が行われています。漢方薬は、歴史とともに発展してきた伝統的な医療であり、多くの人々に利用され続けています。
③傷寒論と中医学
傷寒論と中医学は密接に関係しており、中医学の代表的な古典の一つであります。後に『金匱要略』や『外科正宗』などの書物とともに、中医学の基本的な教科書となり、中医学の基本を理解するために必要な重要な文献の一つです。
傷寒論は漢代の医師である張仲景によって書かれました。 病気にかかってから症状が出始めるまでの期間を7つの段階に分けて、それぞれに対する治療法を記述している書です。また、病気の進行に伴って現れる様々な症状に応じて、漢方薬の処方法も詳しく記述されています。
中医学では、体内のバランスが崩れることが病気の原因と考えられており、病気を治療する際には、その原因を特定して、体内のバランスを取り戻すことが目的としています。そのため、薬を投与するだけはなく、病気の症状や体質を総合的に診断し、漢鍼灸、按摩などの治療法を用いて、体内のバランスを整えることを目指します。
世間のイメージ
漢方に対する世間のイメージは、多様です。
漢方は天然素材を使用しており、副作用が少なく、自然な治療法であるというイメージがある一方で、漢方薬は日本や中国などアジアの文化に根付いた伝統医療であるため、西洋医学に比べると古くからあるというイメージもあります。その効果や安全性に対する疑問や、科学的根拠が乏しいという懸念があることも事実です。
近年では、西洋医学と漢方医学を組み合わせた統合医療が注目されており、世間のイメージも変化しつつあるようです。例えば、日本国内では厚生労働省の指針に基づく臨床試験が進められ、漢方薬の有効性や安全性についての報告がされています。国際的にも、漢方薬の研究が進められており、アメリカや欧州でも臨床試験が行わました。最も普及されている中国においても、漢方薬に関する大規模なRCTが行われました。これらの出来事により、漢方薬は一定の有効性が示されました。
ただし、西洋医学と異なり、漢方薬は個人差や診断の難しさなどの要因があるため、一概に評価することは難しいとされています。前述したように、漢方薬の使用には医師や薬剤師による的確な処方や適切な用法・用量の指導が非常に重要です。必ず医師や薬剤師の指導の下、正しい用法・用量を守って使用しましょう。
最後に

漢方薬とうまく付き合っていくと今まで困っている事、不安に思っている事を解消してくれるきっかけになってくれるかもしれないです。しかし、薬という事を忘れないでください。漢方薬だから量を気にせず服用できるとか、副作用がないとか勘違いしないようにしてください。
自分の身体と心に向き合って、今自分の状況を見つめなおし、どこのバランスがくずれているのかなと考えていただき自分に合う漢方と出会えることを願っております。
薬剤師 小林俊介