
「おなかが痛い」という言葉をみなさんも一度は発したことがあるのではないでしょうか。 現代病ともいわれており、様々な原因が今の時代には蔓延っております。
おなかといっても胃が悪いのか。腸が悪いのかも正確には判断できないのではないでしょうか。
本日は皆様にとって明日以降に胃・腸の調子が改善していけるような記事になればよいなと思い書いていきたいと思います。
目次

胃腸に問題が起きているときの身体のサイン
・胃痛や腹痛:
消化器系のトラブルによって胃痛や腹痛が発生することがあります。痛みの程度や場所は個人によって異なります。
・逆流や胸焼け:
胃酸の逆流によって、胸やけや喉の痛み、食道の炎症などが生じることがあります。
・おならや膨満感:
消化不良や腸内のガスの増加により、おならや膨満感が生じることがあります。
・下痢または便秘:
消化機能の乱れによって、下痢や便秘が発生することがあります。排便の頻度や便の形状が変化する場合には注意が必要です。
・吐き気や嘔吐:
胃腸の問題によって、吐き気や嘔吐感が生じることがあります。
・食欲不振または過食:
胃腸の不調が原因で、食欲が減退したり、逆に食欲が増したりすることがあります。
・体重変化:
胃腸の問題によって、体重の増減が生じることがあります。
・疲労感や体力低下:
胃腸の不調が続くと、栄養吸収やエネルギー供給が十分に行われないため、疲労感や体力の低下が現れることがあります。
これらは一般的なサインであり、個人によって症状や重症度は異なる場合があります。
胃腸の健康を改善するためには、以下のような日々の生活改善策を試してみることが重要です。
・食生活の改善:
規則正しい食事を心掛けましょう。
定時に食事を摂ることで胃腸の働きが安定します。食事の量を適度に抑え、ゆっくりと噛んで食べることで消化を助けます。脂肪や刺激物、加工食品、アルコール、カフェインなど、胃腸に負担をかける食品の摂取を控えましょう。
高食物繊維の野菜(ブロッコリー、ほうれん草、ケール、きのこ類等)や果物を積極的に摂取し、便通を改善します。
・ストレス管理:
ストレスは胃腸の機能を悪化させる要因の一つです。
リラックスする時間を作り、ストレスを軽減する方法を見つけましょう。例えば、瞑想やヨガ、散歩などのリラクゼーション法が効果的です。足りない睡眠や過労も胃腸に負担をかける要因です。十分な睡眠時間を確保し、適度な休息を取るよう心がけましょう。
・適度な運動:
適度な運動は胃腸の健康を促進します。
日常的にウォーキングや軽いエクササイズを行い、血液循環を改善し消化を促進します。
・水分摂取:
適切な水分摂取は胃腸の健康維持に重要です。水分を適度に摂り、脱水症状を防ぎましょう。
・タバコとアルコールの制限:
タバコや過剰なアルコール摂取は胃腸に悪影響を及ぼすことがあります。可能な限り制限し、控えるようにしましょう。
もし喫煙している場合は、禁煙を考慮してください。喫煙は胃腸の機能を悪化させ、消化不良や胃炎などのリスクを高めます
漢方医学では、胃腸障害は一般的な病態の一つとして扱われています。漢方医学では、胃腸障害を「脾胃(ひい)の虚(きょ)弱」や「湿(しつ)邪(じゃ)の停滞」といった状態と捉えます。胃腸障害の原因を体内のバランスの乱れや外的要因(食事、生活習慣、気候など)に求め、個々の症状や体質に合わせた処方を行います。一般的な漢方薬には、生薬(漢方薬の材料となる植物や動物の部位)が配合され、体の調整や症状の改善を促す働きがあります。

胃腸に効果がある漢方薬とは・・・
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、安中散(あんちゅうさん)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)、六君子湯(りっくんしとう)などなど
すべてを上げるのは凄く難しいです。
漢方薬を処方・調剤するときに診るのは、患者様の訴えている症状と原因となっているものは何なのか?を一緒に考えていかないといつまで経っても症状が改善していきません。
そのためには薬だけでなく生活習慣も含めてお話ししていくことになるために口うるさい母親のようないい口になってしまうことも多いです。
今回は一例といたしまして、胃腸障害によく効くといわれている漢方薬についてご紹介していきます。漢方薬とは色々な生薬が配合されて成り立っています(箱の裏を見てもらえればわかるようになってます)。
胃腸に関係ない漢方薬でもこの成分入ってるんだー等の漢方の世界の少し楽しい部分が理解できるのではないかとおもいます。
胃炎・・・
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は、特に急性胃炎症状の方に処方されます。
半夏瀉心湯の主な成分は以下の通りです:
半夏(はんげ): 胃腸の痙攣や過敏性を抑え、吐き気や不安感を緩和します。
黄連(おうれん): 胃腸の炎症を抑え、胃酸の分泌を調整します。
枳実(かんき): 消化を助け、胃腸の不快感や胸やけを緩和します。
炙甘草(しゃかんぞう): 胃腸の調子を整え、消化を助けます。また、苦味を和らげる作用もあります。
+α情報
二日酔いで口渇、嘔吐のある方には・・・
五苓散(ごれいさん)を足して処方します。
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)は、特に普段食欲はあるものの
胃神経症で胃痛のある方に処方されます。
柴胡桂枝湯の主な成分は以下の通りです:
柴胡(さいこ): 肝経に作用し、気の滞りを解消するとされています。
桂枝(けいし): 体の表面の血液循環を促進し、体内の気の流れを整えます。
芍薬(しゃくやく): 血の巡りを良くし、筋肉の緊張をほぐす効果があります。
甘草(かんぞう): 漢方薬の処方でのバランスを整える役割を果たし、他の成分の働きを補助します。
大棗(たいそう): 消化を助け、気の流れを促進する作用があります。
生姜(しょうが): 消化を促進し、体の表面の循環を改善する働きがあります。
六君子湯(りっくんしとう)は、特に普段食欲なあまりなく低酸症、機能性胃腸症傾向の方が処方されます。
六君子湯の主な成分は以下の通りです:
人参(にんじん): 免疫力を高め、体力を補い、脾胃の機能を改善します。
茯苓(ぶくりょう): 利尿作用があり、水分代謝を調整します。
白朮(はくじゅつ): 脾胃を補い、食欲不振や下痢を改善します。
甘草(かんぞう): 胃腸の調子を整え、消化を助けます。
陳皮(ちんぴ): 消化不良や胃腸の不快感を緩和し、食欲を促進します。
枳実(かんき): 消化を助け、胃腸の不快感や胸やけを緩和します。
+α情報
悪心、嘔吐する方には・・・
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を足して処方します。
機能性胃腸症、ダンピング症候群の方には・・・
補中益気湯(ほちゅえっきとう)を足して処方します。
軟便、泥状便の方には・・・
人参湯(にんじんとう)を足して処方します。
胃・十二指腸潰瘍・・・
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)はベースとして潰瘍に関する症状に関して処方されます。
半夏瀉心湯の主な成分は以下の通りです:
半夏(はんげ): 消化不良や嘔吐を緩和する効果があります。
黄連(おうれん): 消化器系の炎症を鎮め、胃の不快感や吐き気を緩和します。
生姜(しょうが): 消化を促進し、胃腸の不調を改善する働きがあります。
甘草(かんぞう): 漢方薬の処方でのバランスを整え、他の成分の働きを補助します。
大棗(たいそう): 消化を助け、胃腸の調子を整えます。
+α情報
心窩部疼痛のある方には・・・
四逆散(しぎゃくさん)を足して処方します。
吐血のある方には・・・
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)を足して処方します。
下血のある方には・・・
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を足して処方します。
ストレスが原因の方には・・・
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)を足して処方します。
過敏性腸症候群・・・
色々な原因がありますが、症状により使い分けがあります。
便秘型・便秘下痢が交互に表れる方には
ベースとしては桂枝加芍薬湯が処方されます。
桂枝加芍薬湯の主な成分は以下の通りです:
桂枝(けいし): 体の表面の血液循環を促進し、体内の気の流れを整えます。
芍薬(しゃくやく): 血の巡りを良くし、筋肉の緊張をほぐす効果があります。
甘草(かんぞう): 漢方薬の処方でのバランスを整える役割を果たし、他の成分の働きを補助します。
生姜(しょうが): 消化を促進し、体の表面の循環を改善する働きがあります.
大棗(たいそう): 消化を助け、体の調子を整えます.
+α情報
便秘型・便秘下痢が交互に表れる方の中でも
イライラ、緊張の強い方には・・・
加味逍遙散(かみしょうようさん)or四逆散(しぎゃくさん)を足して処方されます。
冷えて腹痛、膨満感のある方には・・・
大建中湯(だいけんちゅうとう)を足して処方されます。
便の量が少なく硬いという方には・・・
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)を足して処方されます。
下痢型の方には
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)が処方されます。
半夏瀉心湯の成分は以下の通りです:
半夏(はんげ): 消化不良や嘔吐を緩和する効果があります。
黄連(おうれん): 消化器系の炎症を鎮め、胃の不快感や吐き気を緩和します。
人参(にんじん): 胃の働きを助け、消化を促進します。
甘草(かんぞう): 漢方薬の処方でのバランスを整え、他の成分の働きを補助します。
大棗(たいそう): 消化を助け、胃腸の調子を整えます。
下腹部痛・・・
特に疝痛、腹痛に波がある方には(主に冷えによるもの)
桂枝加芍薬湯(けいししゃくやくとう)or痛みの強い時には大建中湯(だいけんちゅうとう)がベースとして処方されます。
大建中湯(だいけんちゅうとう)の成分は以下の通りです:
甘草(かんぞう): 漢方薬の処方でのバランスを整え、他の成分の働きを補助します。
人参(にんじん): 消化を促進し、胃腸の働きをサポートします。
陳皮(ちんぴ): 消化不良や胃腸の不快感を緩和する効果があります。
干姜(かんきょう): 消化を助け、胃腸の調子を整えます。
大棗(たいそう): 消化を促進し、胃腸の働きをサポートします。
+α情報
軟便、泥状便の方には・・・
人参湯(にんじんとう)を足して処方します。
水様便、尿量減少の方には・・・
真武湯(しんぶとう)を足して処方します。
妊娠中や婦人の腹痛の方には・・・
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を足して処方します。
便秘症の方には
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
麻子仁丸(ましにんがん)が処方されます。
桃核承気湯の成分は以下の通りです:
桃仁(とうにん): 消化不良を緩和し、胃の働きを促進します。
石榴皮(ざくろかわ): 胃酸過多を抑制し、消化を助けます。
豆鼓(とうこ): 胃腸の不快感や胸やけを緩和します。
甘草(かんぞう): 漢方薬の処方でのバランスを整え、他の成分の働きを補助します。
麻子仁丸の成分は以下の通りです:
麻子仁(ましにん):麻子仁は、アサの種子(麻の実)から得られる生薬で、胃腸の調子を整える作用があります。消化不良や胃腸の弱りを改善する効果が期待されています。
茯苓(ぶくりょう):茯苓は、キク科の植物から得られる生薬で、利尿作用や胃腸の調整作用があります。体内の余分な水分を排出し、腸内環境を整える効果が期待されます。
神曲(しんきょく):神曲は、ウコン科の植物から得られる生薬で、胃腸の働きを活性化させる作用があります。消化不良や腹部膨満感を緩和する効果が期待されます。
+α情報
痙攣性便秘の方には・・・
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)を足して処方します。
腸内乾燥型(高齢者)の方には・・・
麻子仁丸(ましにんがん)を足して処方します。
機能性胃腸症、弛緩性便秘の方には・・・
補中益気湯(ほちゅえっきとう)を足して処方します。
最近気になっている情報を共有します。
腸内フローラというものが、健康に密接に結びついているのではないかと。
腸内フローラ(ちょうないフローラ)は、消化管(主に大腸)内に存在する細菌や微生物の集合体を指します。人間の腸内には数百種類以上の微生物が生息しており、これらの微生物の総称を腸内フローラと呼びます。腸内フローラは、共生関係にあり、私たちの健康に重要な役割を果たしています。
腸内フローラは、以下のような機能を持っています:
消化・吸収の支援: 腸内フローラは食物の消化・吸収に関与し、特に食物繊維や難消化性物質を分解・発酵することで、栄養素やエネルギーの吸収を助けます。
免疫機能の調節: 腸内フローラは免疫系と密接に関連しており、免疫機能の発達や維持に寄与します。適切な腸内フローラは免疫応答を正常化し、炎症やアレルギー反応の予防にも関与します。
病原菌の制御: 健康な腸内フローラは、有害な病原菌の増殖を抑制する役割を果たします。腸内環境を適切に保つことで、病原菌による感染症のリスクを低減することができます。
腸内環境の維持: 腸内フローラは腸内の酸度やpHバランスを調整し、腸内環境を適切な状態に保ちます。健康な腸内環境は、腸運動の正常化や便通の促進にも関与します。
腸内フローラは、生後間もない赤ちゃんの腸内から形成され、個人ごとに微妙に異なる組成を持ちます。さまざまな要因(出生方法、栄養摂取、抗生物質の使用、ストレス、生活習慣など)が腸内フローラに影響を与えるため、バランスが崩れると健康への影響が出ることもあります。
腸内フローラを改善するためには、以下のような方法があります:
プロバイオティクスの摂取: プロバイオティクスは、腸内に有益な細菌を補充するためのサプリメントや食品です。ヨーグルト、発酵食品(キムチ、納豆など)、プロバイオティクス入りのサプリメントなどを摂取することで、腸内フローラを改善する助けになります。
食物繊維の摂取: 食物繊維は、腸内の善玉菌のエサとなります。野菜、果物、穀物、豆類などの食物繊維をバランスよく摂取することで、腸内環境を整えることができます。
多様な食事の摂取: 食事のバリエーションを増やし、様々な種類の食材を摂取することで、腸内フローラの多様性を向上させることができます。さまざまな種類の野菜、果物、たんぱく質源、健康な脂肪などをバランスよく摂取しましょう。
抗生物質の適切な使用: 抗生物質は有益な細菌だけでなく、腸内の悪玉菌も減少させる可能性があります。抗生物質は必要な場合にのみ使用し、医師の指示に従って正しく使用しましょう。
ストレス管理: ストレスは腸の運動や腸内環境に影響を与えることがあります。適切なストレス管理方法を見つけ、リラクゼーションやマインドフルネスの実践、適度な運動などを取り入れることで、腸内フローラの改善に役立ちます。
これらの方法は一般的なアドバイスですが、個々の状況や健康状態に応じて効果的な方法は異なる場合があります。
終わりに
人は産まれてから死ぬまでずっと物を食して生きていきます。
常に良い生活を送れる方は少ないかと思いますが、昨日よりも今日良い生活を送るんだ!
という心がけが一番大事なのではないかと思います。
どんなに良い生活をしていてもストレスがなくなることは無いです。
日々の生活の中で色々な情報が溢れかえっておりますが、ご自分で正しいと思う情報を取捨選択していきながら、信じて行動に移すことが日々最高の身体を作っていく上では大事なのではないかと思います。
薬剤師 小林俊介


