
漢方薬は、中国で古くから伝承されてきた自然療法のひとつです。植物や動物、ミネラルなどの天然の成分からなる漢方薬は、体質や症状に合わせて処方され、緩やかで穏やかな効果をもたらします。最近では、日本でも漢方薬が注目されるようになってきました。
特に、漢方エキス剤は、手軽に漢方薬を服用することができ、多くの人々に愛用されています。しかし、漢方薬は体質や症状によって違う処方が必要な場合があるため、自己判断での服用は危険です。正しい情報をもとに、適切な処方を受けることが重要です。本記事では、漢方エキス剤の種類や効果的な飲み方について解説します。
目次
漢方薬の種類

漢方薬は、植物、動物、鉱物などの天然素材を用いた薬剤で、その種類は非常に多岐にわたります。代表的な漢方薬の種類には、植物性漢方薬、動物性漢方薬、鉱物性漢方薬があります。
植物性漢方薬の中には、人参、黄耆、当帰、甘草、桂皮などがあります。人参は、疲れやストレス、栄養不足などによる体力低下に効果があるとされています。黄耆は、免疫力を高める作用があり、疲れやストレスによる体力低下にも効果があります。当帰は、女性ホルモンのバランスを整え、生理不順、生理痛、更年期障害などに効果があるとされています。甘草は、咳止め、痰を切る作用があり、胃腸の調子を整える効果もあります。桂皮は、体を温め、冷え性や生理痛、頭痛、肩こりなどに効果があるとされています。
動物性漢方薬には、熊胆、牛黄、雄黄などがあります。熊胆は、解熱、抗炎症作用があり、発熱、風邪、肝炎などに使用されます。牛黄は、解熱、鎮痛、鎮静作用があり、高熱、頭痛、睡眠障害、うつ病などに使用されます。雄黄は、強い殺菌作用があり、感染症や化膿性皮膚症、疥癬などに使用されます。
鉱物性漢方薬には、生石灰、滑石、硫黄などがあります。生石灰は、解熱、鎮痛、消炎作用があり、腹痛、下痢、便秘、嘔吐などに使用されます。滑石は、解熱、鎮痛、鎮静作用があり、熱中症、不眠症、痔疾、出血、創傷などに使用されます。硫黄は、殺菌、消炎、鎮静作用があり、アトピー性皮膚炎、湿疹、蕁麻疹、痛風、外傷など
漢方薬のもたらす効能効果

漢方薬には、様々な効果があるとされています。以下に代表的な効果を挙げてみます。
症状の緩和や改善:漢方薬には、各種の症状に対して、緩和や改善効果が期待されるものがあります。例えば、肝臓や腎臓などの慢性疾患、アレルギー疾患、婦人科疾患、消化器疾患、神経疾患などに対する効果が期待されます。
免疫力の向上:漢方薬には、免疫力を向上させる効果が期待されるものがあります。例えば、抗菌作用や抗ウイルス作用があるとされるものがあり、風邪やインフルエンザ、感染症などに対して有効とされています。
副作用の少なさ:漢方薬は、天然素材を原料としているため、副作用の少ない治療法として知られています。
予防効果:漢方薬は、体質改善やバランスの調整に効果が期待できるため、病気の予防にも有効とされています。例えば、風邪やインフルエンザ、アレルギー疾患などに対して、予防的に漢方薬を使用することができます。
ただし、漢方薬には、使用上の注意点や副作用の可能性もあります。医師の指導の下で正しい使用法・用量を守って使用することが大切です。
具体的な事例として、下記の症状に特に効果的です。
【冷え性】 冷え性は、冷えた体による血行不良や自律神経の乱れが原因で、手足の冷え、肩こり、生理不順、不妊症などの症状が現れます。漢方薬には、体を温める効果があるものが多く、冷え性に効果があるとされています。 例)四君子湯、理中丸、温経湯など
【便秘】 便秘は、腸内の動きが弱まることによって、便の排泄が滞り、腹痛、腹部膨満感、頭痛などの症状が現れます。漢方薬には、腸の動きを促す効果があるものが多く、便秘に効果があるとされています。 例)大承氣湯、芍薬甘草湯、車前子茶など
【肝臓疾患】 肝臓疾患は、肝臓の機能が低下することによって、疲労感、黄疸、食欲不振、下痢、腹水などの症状が現れます。漢方薬には、肝臓機能を改善する効果があるものが多く、肝臓疾患に効果があるとされています。 例)加味逍遥散、柴胡桂枝湯、小柴胡湯など
【生理痛】 生理痛は、月経に伴う下腹部痛、腰痛、頭痛などの症状が現れます。漢方薬には、血行を促進する効果があるものが多く、生理痛に効果があるとされています。 例)桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、加味逍遥散など
【アトピー性皮膚炎】 アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥や炎症によって、かゆみ、赤み、発疹、肌荒れなどの症状が現れます。 例)柴胡桂枝湯、当帰芍薬散、紫雲膏など
①漢方エキス剤の効果的な飲み方
指示された用法・用量を守って正しく服用する必要があります。また、漢方薬は、体質や症状によって違う処方が必要な場合があるため、医師に相談することが重要です。
さらに、漢方エキス剤は、食前または食間に服用することが一般的ですが、特定の漢方薬によっては、食後に服用することが適切な場合もあります。また、漢方エキス剤は、お湯などの温かい飲み物で溶かしてから服用することが多いです。温かい飲み物で溶かすことで、体内に吸収されやすくなり、効果が高まる場合があります。(ただし、熱湯で溶かしすぎると、漢方薬の成分が壊れる場合があるため、適切な温度で溶かすようにしましょう。)
最後に、漢方エキス剤を服用する際には、飲み残しを避けるようにしましょう。漢方エキス剤は、一度に多くの量を飲むことが避けられない場合もありますが、医師に相談した上で、適切な量を決めるようにしましょう。飲み残しをしてしまうと、漢方薬の成分が体内に十分に吸収されず、効果が低下する場合があります。
最後に
漢方薬は、多くの種類があり、それぞれ特有の効能・効果があります。漢方薬の効能・効果は、症状に合わせて適切な処方を行うことで発揮されます。薬剤師や医師による正しい処方や使用方法を守ることで、漢方薬を安全に使用しましょう!
薬剤師 小林俊介