お正月になると、日本の多くの家庭で用意される「お屠蘇(おとそ)」。
お屠蘇は単なる祝い酒ではなく、古くから“邪気を払い、長寿を願う”ために飲まれてきた伝統的な薬酒です。
新しい一年の始まりにふさわしい、縁起の良い意味と、健康を祈る知恵が詰まっています。
お屠蘇の由来 ― 中国の薬酒がルーツ
お屠蘇は、もともと中国で正月に飲まれていた「屠蘇酒(とそしゅ)」が起源。
“屠”は「悪いものを打ち払う」、
“蘇”は「よみがえる・生き返る」という意味で、
悪気を祓い、生命力をよみがえらせる酒 として伝わりました。
日本には平安時代に伝わり、宮中行事として定着。やがて武家や庶民にも広まり、現在まで「新年に飲む薬酒」として受け継がれています。
お屠蘇の中身 ― 屠蘇散(とそさん)という漢方薬
お屠蘇は、**屠蘇散(とそさん)**と呼ばれる生薬を日本酒またはみりんに浸けて作ります。
● 屠蘇散に含まれる代表的な生薬
- 山椒(さんしょう):胃腸を温め、冷えを散らす
- 桂皮(けいひ):シナモン。体を温め血行を促す
- 防風(ぼうふう):風邪の初期や邪気を払う
- 桔梗(ききょう):喉の炎症を鎮める
- みかんの皮(陳皮):消化促進・気の巡りを良くする
これらをブレンドしたものが屠蘇散で、胃腸を整え、体を温め、お正月の食べすぎ・飲みすぎにも役立ちます。
お屠蘇の作り方
✔ 材料
- 屠蘇散(1袋)
- みりん または 日本酒(甘口) 約300ml
✔ 手順
- 元日の朝までに、屠蘇散をお酒に浸けておく
- 一晩浸けると、生薬の香りがしっかり移る
- 飲む前に屠蘇散の袋を取り出すだけで完成
※アルコールに弱い方やお子さん向けに、みりんだけで作る方法もあります。
お屠蘇の飲み方の作法
地域によって異なりますが、一般的には以下のように飲みます。
● 飲む順番
「若い人 → 年長者」へと順番に飲むのが習わし。
これは、“若い力を年長者へおすそわけする”という意味があります。
● 使われる専用の器
三段重ねの「屠蘇器」や「盃(さかずき)」を使用する場合もあります。
華やかな漆器でいただくと、お正月らしさがぐっと高まります。
お屠蘇の健康効果(漢方の視点)
屠蘇散には、胃腸を整え、血行を促進し、体を温める生薬がバランスよく配合されています。
そのため、以下のような働きが期待できます。
- 正月太りを防ぐ消化のサポート
- 冷えの改善・血流アップ
- 風邪の予防
- 食欲不振や胃の重さの改善
お祝いと健康祈願を兼ねた、まさに「薬酒」と呼べる存在です。
現代のお屠蘇 ― 気軽に楽しむ新年の健康習慣
最近では、
- ノンアルコール屠蘇
- ハーブティー風にアレンジした屠蘇
-
甘酒に屠蘇散を浸ける優しいレシピ
など、ライフスタイルに合わせた楽しみ方も登場しています。
家族や友人と新年を祝う際に、「今年も健康で過ごせますように」と願いを込めてお屠蘇をいただくと、1年の始まりがより温かいものになります。
まとめ
お屠蘇は、新年の無病息災・長寿を願う伝統的な薬酒。
そこには、古くからの漢方の知恵と健康への思いが詰まっています。
忙しい現代でも、少しだけ時間をかけてお屠蘇を準備することで、
お正月の食卓が華やぐだけでなく、家族の健康を願う優しい気持ちを共有できます。
今年のお正月はぜひ、お屠蘇で心と体を整えるひとときを過ごしてみてください。
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