麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、乾いた咳・のどの乾燥・長引く咳に用いられる代表的な漢方薬です。
とくに「コンコンと続く乾いた咳」「夜に咳が出て眠れない」など、のどが弱っている風邪のあとに効果を発揮します。
『金匱要略(きんきようりゃく)』に収載され、古くから“のどを潤して咳をしずめる処方”として活躍してきました。
■ 麦門冬湯の構成生薬と働き
麦門冬湯は以下の6つの生薬で構成されています。
- 麦門冬(ばくもんどう) … のどを潤し、乾燥した咳を止める
- 半夏(はんげ) … たんを調整し、むせ返る咳を抑える
- 人参(にんじん) … 体力を補い、回復を助ける
- 大棗(たいそう) … 胃腸を整え、疲労をやわらげる
- 甘草(かんぞう) … のどの炎症を抑える
- 粳米(こうべい) … 胃腸を守り、薬の作用をやさしくする
これらの生薬が組み合わさり、
のどを潤しながら、むせるような咳を落ち着かせることができる処方になっています。
■ 麦門冬湯が向いている症状
麦門冬湯が得意とするのは「乾燥した咳」。
こんな症状のときに向いています:
- 乾いたコンコン咳
- のどがヒリヒリ乾燥する
- 咳が長引いて止まりにくい
- 風邪が治った後も咳だけ残る
- 夜になると咳が悪化し、眠れない
- 痰が少なく、からむというより“のどに引っかかる感じ”
一方で、痰が多くてゼロゼロする咳には向いていません。
その場合は、清肺湯や麻杏甘石湯など別の処方が選ばれます。
■ 麦門冬湯が向いている体質
麦門冬湯は、以下のような体質・傾向の人にマッチします。
- 肌やのどが乾燥しがち
- 少しの刺激で咳が出やすい
- 風邪のあと“咳だけ残る”タイプ
- 胃腸が弱りやすい(粳米・大棗が補ってくれる)
特に、のどの弱いタイプ・冬の乾燥で咳が出る体質の人と相性が良いです。
■ 麦門冬湯を使うときの注意点
- 胃弱の人は、最初は少量から様子を見る
- 痰が多い咳には合わない
- 乾燥が原因でない咳(アレルギーなど)だと効果が弱いことも
- 甘草が入っているので高血圧・むくみがある人は注意
■ まとめ
麦門冬湯は、
のどを潤し、乾いた咳をしずめる“優しい咳止め”漢方。
- 乾いた咳
- 風邪後の長引く咳
- 夜間に悪化する咳
こういった症状があるときに非常に相性がよく、風邪後のケアとしても便利です。